わが国において監視カメラの設置を推進ないし支持する主張は社会的背景として治安の悪化を主張している。たしかに警察統計によると2000年(平成12年)以降犯罪認知件数が急激に増加するとともに検挙率が急低下しているとされる。首都大学束京・前田雅美教授著『日本の治安は再生できるか』(筑摩書房2003年)によると犯罪白書によればわが国の犯罪状況は戦後の混乱期をピークに30年間は減少し続け1975年(昭和50年)ころから上昇に転じ1996年(平成8年)ころ以降犯罪率・犯罪認知件数とも急激に増加し戦後混乱期を上回る状況になっている。その原因の一つは外国人犯罪の増加であり他の一つは少年犯罪の増加であるという。監視カメラ増加の背景に治安の悪化があるのならば警察白書に治安の悪化と監視カメラを結びつける記述がなされているはずである。警察白書を中心に昭和55年から現在に至る監視カメラに対する警察庁の取り組みの経緯を概観すると次のとおりである。銀行等における強盗事案対策手段としてのみ認識されてきたが地下鉄サリン事件を契機として駅などの公共の場所への設置がその後自動車・オートバイ盗の防止手段として駐車場への設置が推進されてきたこと平成14年2月に新宿歌舞伎町に監視カメラが設置されたことを契機に公道への監視カメラ設置が開始されたことがわかる。
わが国の監視カメラ社会化に向けたターニングポイントを二つ設定するとすれば,一つは地下鉄サリン事件,一つは新宿歌舞伎町に監視カメラが設置された平成14年2月であろう。平成14年2月に新宿歌舞伎町に監視カメラが設置される理論的根拠となったのは,平成13年3月に財団法人都市防犯研究センターが作成した「コミュニティセキュリティカメラシステムに関する調査研究報告書」であると思われる。この報告書は,犯罪認知件数(特に凶悪犯)の増加と検挙率の低下を防止するには警察力の限界に達しているとして,監視カメラ先進国である英国の「CCTVイニシアティブ」を参考に,わが国においても「警察予算で公共空間に防犯カメラを必要台数設置し,専用の受信センターを設けて警察職員が画像を送信・録画するとともに,警察庁の通信司令本部においても必要な画面を確認できるという街頭防犯カメラシステムの導入」を推進するべきであるとしつつ被撮影者の肖像権・プライバシー権との調整については,後述する一定の基準に従うべきであるとする。(4)近年頻発しているとされる子どもの安全にかかわる凶悪事件1997年(平成9年)の神戸須磨児童連続殺傷事件,1999年(平成11年)の京都日野小学校児童殺傷事件犬2001年(平成13年)の大阪池田小学校児童殺傷事件,2003年(平成15年)に長崎市で起きた幼児誘拐殺人事件,2004年(平成16年卜の奈良富雄北小学校女児誘拐殺人事件,2005年(平成17年)の寝屋川市立中央小学校教員殺傷事件,広島女児殺害事件,秋田県藤里町の小一男児殺害事件,そして現時点(平成18年12月31日)で未解決の栃木県今市市の小一女児殺害事件など,子どもの安全を脅かす事件が頻発11した。これらの事件め源流に遡るど,おそらく1988年(昭和63年)から1989年(平成元年):にかけて,埼玉県と東京都で4人の幼女が相次いで誘拐,殺害された「連続幼女誘拐殺人事件」事件にたどり着くのであろう。なお,奈良富雄北小学校女児誘拐殺人事件については,被害女児を連れ去った自動車や容疑者が近くの監視カメラに撮影され昭和55年から平成6年までは,金融機関やスーパーマーケットの防犯および犯人特定の手段として,監視カメラの設置が有効であるとの実例が稀に報告されている程度である。
(参考情報)相模原不動産ガイド